犬のトレーニングの中で多少なりとも罰を活かすには、次の三つの方法があります。
(1)「初犯」の現場をとらえ、タイミングを逃さずに強烈な罰を与えます。こうするとたいていの犬は二度と同じ間違いを犯さなくなります。過去にその行動を強化するすきを与えていないので、犬は「今回はいつもと何か違っていたのだろう」(何かこの罰を招いたのだろう)と考えた時に必ず正しい回答、「直前の行動」にたどりつくからです。このケースでは犬のこうした思考パターンが飼い主にとって都合よく働くのです。
(2)罰を効果的に利用するもう一つの方法は、直前に警告を出した上でタイミングよく強烈な罰を与えるというやり方です。例えば犬が勝手にリードを引っ張ろうとするのなら、リードを引き寄せる前に「引っ張るな」と口にして、犬に罰を回避するチャンスを与えます。犬が引っ張るのをやめたら罰はなしです。
構わずに引っ張り続けたらリードを引き戻します。この場合は警告の言葉が、罰との関連に気づかせてくれる「磁石」のような働きをします。つまり犬が「いつもと何か違っていたのだろう」と考えた時に「そういえば、引き戻される前に『引っ張るな』という言葉を聞いたな……」ということに思い当たるのです。
(3)罰を効果的なツールにする三番目の方法は、逆(桔抗)条件付けや、問題行動が抑制されている間に報酬を利用して別の行動を強化する、といった別の手法を一緒に用いるようにすることです。(この場合も必ず罰の前に警告を与えるようにします)。
例えば警告を出してリードを引き寄せた後で、リードを引っ張らないで歩くといった別の行動を誘発し、強化するのです。