犬の消去バーストは、人間の普段の生活でもお馴染みのものです。例えばクレジットカードの磁気が弱くなり、機械を通しても情報が読みとれなくなった場合、カードを預かった店員は即座に機械での読み取りを諦めて手で番号を入力しようとするでしょうか。
そうではなく、もう一度機械にカードを通してみて、それでもだめならまたもう一度やり直し、回を重ねるごとにむきになってゆくのではないでしょうか。あるいはカードを通すスピードを変えてみたり、カードを引く力を強めたり弱めたりするかもしれません。
店員が行動戦略の一大転換をはかるのは(機械を諦めて面倒な手入力に切り替えるのは)、カードを機械に通すという行為が「消去」された後のことです。これが消去バーストです。むきになってカードを機械に通し、色々と試してみることはいずれも消去バーストに相当します。犬もやはり吠えるという手段を簡単に諦めることはせず、最後の抵抗を試みるのです。
カードをスキャナーに通せば簡単に支払いが済むことを店員が学習しているように、犬も、吠えれば飼い主が要求をかなえてくれることを学習している。そのため犬は、いつもより激しく吠えて相手が反応しないことを確かめてからでなければ、絶対に行動戦略を変更しないのです。